−レッツ☆ウォー− 


第二次・しじん☆戦争(2006.8.4)

「いっちゃん。詩人さんがね……」
 また出たか、詩人こと山口。俺が半眼になっていることは想像に難くない。
 困ったような声だ。双葉は清楚なお嬢様風に、下ろした髪の両サイドだけ後ろで結っていた。ウチの学校の制服は清楚で可憐な少女に似合うと評判だったりそうでもなかったり。
 死語であるが、実際はコギャル系が多い。だから双葉が初々しく見えている。
「また山口に何か言われたのか。困ったな」
 呆れたような声で返してやる。机に肘を着いて、顎を乗せておく。苦笑する俺を、立ったままの双葉は微妙な上目遣いで見た。
 ちょうど俺の後ろの方で誰かが倒れた。双葉よ、お前はなんて罪作りな女なんだ。誰かを視線で殺したろ。
「ええ、困っているの。詩人さんが、私のために一日ひゃくぜんを目標にするって言うのよ」
「へぇー。それなら別にいいじゃないか。一日百善」
「だめよ。無理だわ。詩人さんが体を壊してしまうでしょう?」
 ……。さ〜あ、考えろ俺。無理? 一日百個、いいことは出来ないのか? 体を壊すほどの重労働か? きっと何かあるぞ。相手は双葉だ。
 悲しいような、止めてくれとでも言うような顔と声。俺は頭を抱えて、脳の限界点に戦いを挑む。だが、今のセリフを解読することも、次のセリフを読むことも出来なかった。そして、双葉からの与えられる致死性の攻撃。
「そんなに食べたら……」
「分かったっ! 分かったぞ双葉っ! 分かったから畳み掛けないでくれ!」
 柄にもなく叫ぶ俺。背後で足音数人分が響く。双葉の目はきょとんと丸くなった。
 ……後日、彼に休日呼び出しがあった。詩人・山口は「双葉に分かりにくいことを言って困らせた罪」によって一日限定、百膳の刑に処された。

☆ 本日の試合結果。双葉勝利。


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